第156章

後藤辰和に掴まれた手首が、まるで焼き鏝を押し当てられたかのように熱をもっていた。

礼拝堂の中は静まり返り、割れた窓ガラスを吹き抜ける風が、すすり泣くような音を立てているだけだ。

彼との距離が近すぎる。その漆黒の瞳に、少し窶れた私の顔がはっきりと映り込んでいるのが分かるほどに。

「後藤さん、手を離してください」

私は強引に手首を振り払った。声が強張るのを抑えきれない。

「記憶を失い、取り戻したいと焦るお気持ちは理解できます。ですが、あやふやな感覚だけで私を待ち伏せし、問い詰めるのはやめていただきたいんです」

「私の時間を奪うだけでなく、あらぬ誤解を招きかねません」

「後藤さんはよ...

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