第173章

私が彼女に対してどれほどの偏見や嫌悪感を抱いていようと、彼女が危機一髪のところでアリを救ってくれたのは紛れもない事実だ。その一点だけでも、私は彼女に恩を感じずにはいられなかった。

後藤辰和の顔色も極めて複雑だった。彼は数秒間沈黙した後、傍らに控える使用人に命じた。

「坂東さんを助け起こしてくれ。すぐに家庭医を呼んで診せるんだ」

そして、私の腕の中にいるアリに視線を移す。

「後でアリも医者に診察させよう。どこか怪我をしていないか確認するんだ」

私は無言で頷いた。

家庭医はすぐさま駆けつけ、まずはアリを診察した。幸いなことに、恐怖によるショックとわずかな擦り傷を除けば、大事には至って...

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