第177章

私たちの生活は、再び平穏を取り戻していた。

星火スタジオへ赴き、新しく請け負ったいくつかのプロジェクトの処理を終えたばかりのタイミングで、後藤寧々から電話がかかってきた。

「寧凪、ちょっと聞いてほしいことがあるんだけど」

彼女の口調はいつもと少し違っていた。普段の騒々しさが鳴りを潜め、どこかモジモジとしている。

私は手元の作業を続けながら促した。

「何?」

「私……ある人と出会っちゃって」

私は手にしていた服のサンプルを置き、問い返した。

「どんな人?」

「ほら、数日前に車で出かけたじゃない? 雨が降ってて道が滑りやすくてさ、うっかり他の車と擦っちゃったのよ」

「怪我はな...

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