第19章

 男の背中が遠ざかっていくのを見送りながら、胸の奥がずしんと沈んだ。見えない手で心臓をぎゅっと鷲づかみにされたみたいに、息が詰まる。

 行くつもりなのだろうか。

 土壇場になって、やっぱりやめるとでも言い出すつもりなのか。

 それとも、こんな離婚じゃ私が得だとでも思って、新しい「罰」の方法でも思いついたのか。

 呼び止めようとして、腰を浮かせかけたところで、ふと我に返る。

 離婚して、私から解放される――それって、彼が昼も夜も願ってきたことじゃなかったっけ。

 あのバカみたいな新婚初夜のあと。私が薬を盛ってベッドに潜り込んだ女だと、彼が決めつけたあの日から。彼は一刻も早く「腹黒女...

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