第23章

 私は何も言わず、ちらりと彼を一瞥しただけだった。

 この人のコーディングの腕は中の下。けれど、頭の回転だけはそこそこ早い。

 問いには答えず、私は堀内逸弥と肩を並べて、息の詰まるような宴会場から外へ出た。

 夜風がひやりと頬を撫でる。さっきまで胸にこびりついていた重苦しさと火薬じみた空気が、少しだけ薄らいでいく。

 ホテルのポーチに敷かれた磨き上げられた大理石に足を踏み出した瞬間、ポケットの中でスマホが小さく震えた。

 取り出すと、画面が明るくなり、新着メッセージが一件、目に飛び込んでくる。

 発信者 後藤辰和。

 短い一文。けれど、それはとうに氷結していたはずの心の湖面に、...

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