第32章

 そう言い捨てると、後藤辰和は私の反抗など一切許さず、そのまま腕をつかんで部屋へと引きずっていった。

 背後で扉が重々しく閉まる。外界のすべてが遮断され、室内には私たち二人だけが取り残される。

 空気がぴたりと凍りついたように重い。胸の奥まで圧迫されて、息が苦しい。

 後藤辰和は窓際に立ち、こちらに背を向けたまま、広い肩をぴんと張りつめている。

 どれくらい時間が経っただろうか。ようやく彼はゆっくりと振り返った。その瞳には、私には読み解けない感情が渦巻いていた。消しきれない怒り、それ以上に、責め立てるような痛切な色が混じっている。

「どうしてだ」

 声は掠れ、彼らしくないほど荒れ...

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