第34章

「じゃあ、どうして後藤佳奈が、私の夫のことを『パパ』なんて呼ぶわけ? それも、私たち夫婦の問題ってこと?」

早乙女星奈は、ぐっと言葉に詰まった。顔に一瞬だけ動揺の色が走る。けれどすぐに、無理やり落ち着き払った声を作った。

「子供の言うことなんて、本気にするもんじゃないでしょ。何も分かってないんだから。大人がいちいち気にしてどうするの?」

「子供が分かってなくても、まだマシよ」

私の声はふっと冷え、含みを持たせる。

「厄介なのは――分かってて、そういうことをさせる大人がいる場合」

「……どういう意味だ?」

低く通る声が、会話に割って入った。明らかに不機嫌さを含んだ調子で。

後藤...

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