第35章

 私のスマホは、ずっと沈黙したままだった。

 待ち合わせの詳細を告げるメッセージなんて、一通も来ていない。

 N様が姿を見せなければ、この会合は成立しない。

 小林美音と、その兄はどうやって場をまとめるつもりなのか。

 N様に急用ができた、とでも言い訳するのだろうか――。

 そんなことを考えているうちに、私の中で別の感情がむくりと顔を出した。

 興味。

 好奇心というやつだ。

「明日の夜の顔合わせ、私も行っていい?」

 わざと感情を抑え、淡々と口にする。

 閉じていた瞼が、ぱちりと上がった。

 後藤辰和の視線が、鋭い刃のようにこちらを射抜く。

「お前が行って、何を...

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