第37章

包厢を出た途端、彼はさっと私の手を振り払い、大股で前を行った。

その背中を追いながら、私は彼との距離がみるみる開いていくのを見ていた。けれど、前みたいに小走りで追い付こうとはせず、わざと歩調を落とす。自分のペースで。

彼の後ろを走り続けることに必死で、危うく忘れるところだった。自分の歩幅を。

自分の人生を。

私が車のそばまで辿り着いたとき、後藤辰和はもう少し待たされたらしく、すでに後部座席でスマホを眺めていた。私の足音に気付いたのか、ふいと顔を上げ、静かな目がこちらを捉える。

思わず、歩みが止まる。

後藤辰和が、私を待っていた。

「まだ乗らないの? それとも歩いて帰るつもりか、...

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