第40章

 男の人が何かを感じ取ったように、ふいに顔を上げ、こちらを見た。

 神様に贔屓されたとしか思えない顔立ちだ。どこにいても目を引くのに、しかもその背後には高級車がある。

 ちょうど退勤時間で、出入口を出入りする社員たちの視線が、次々とこちらになだれ込んでくる。

 私は慌ててドアを開けて後部座席に滑り込み、運転手に急かした。

「早く出して。ここから一刻も早く離れたいの」

 後藤辰和は口元に笑みを浮かべ、眉尻をふっと上げた。

「誰に見られるのが怖いわけ?」

 訳知り顔のその言い方に、胸の奥がぴくりと強張る。

 誰のことを言っているのかなんて、考えるまでもない。

「とにかく早く帰っ...

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