第43章

 後藤辰和が、早乙女星奈の本当の顔を知ったあと、彼女にどう接するのか――

 それを考えずにはいられなかった。

 けれど、本人はと言えば、いつまでも黙ったまま、ベッドの上でこちらを見ようともしない。

 底の見えない黒い瞳は、まるで深海。

 何を考えているのかなんて、知りたくもなかった。

 私は適当な椅子を一脚引き寄せ、ベッドから少し離れた場所に腰を下ろすと、スマホを取り出して画面を眺め始めた。

 病室はしんと静まり返っている。

 聞こえるのは、私と彼の呼吸だけ。

 その静寂を破ったのは、彼の低い声だった。

「このことは、ばあちゃんには言わないでくれ」

 ぞわり、と背筋の奥か...

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