第45章

 私は冷静に後藤辰和の手を振りほどき、上体を起こして服を整えた。

 いつも冷静沈着なその顔に、似つかわしくない驚きが浮かぶ。

「お前……」

「寝落ちしたことなんて、誰も知らないでしょ」

 私は気にも留めないふうに肩をすくめる。

 眠ってしまったあと、誰の手がどう動いたのかなんて、正直分からない。どうせもう、それよりずっと踏み込んだことは済ませている。ただ一緒に抱き合って眠っただけ。大したことじゃない。

 ベッドを降りて着替えを取りに行くあいだ、私の顔には一片の感情も浮かばなかった。淡々としたものだ。

 後藤辰和はただ、じっとこちらを見ている。その視線をわざと無視し、何も聞こえな...

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