第49章

後藤辰和が不機嫌そうに声をひそめた。

「星奈、もう疲れただろ。そろそろ戻って休め」

早乙女星奈は、今にも崩れそうなとろけるような笑顔を必死で貼りつけたまま、瞳の奥にあからさまな不満を浮かべた。

「じゃあ、わたし先に帰るね。また明日来るから」

そう言って彼女は後藤辰和に背を向け、振り返りざまに私をギロリと睨みつける。まるで「変なこと考えるんじゃないわよ」と警告しているみたいに。

私は思いきり目をぐるりと回した。

別に好きでここに残ってるわけじゃない。辰和が祖母の前でなにか言い出したら困るから、仕方なく付き合ってるだけだ。

それなのに、あの警戒ぶり。まるで自分のほうが後藤辰和の「妻...

ログインして続きを読む