第52章

後藤辰和の視点

 彼女がまだ状況を飲み込めていないうちに、背中の傷に触れないよう気をつけながら、そのまま抱き上げてベッドに横たえた。

 胸の奥では相変わらず苛立ちが渦巻いているのに、こうして抱きしめて、彼女の匂いを嗅いでいると、嘘みたいに心が静まっていく。

「一緒に寝ようぜ」

 温水寧凪は全身で拒絶する。

「……私たち、もう同じベッドで寝るような関係じゃないでしょ」

「でも本家にいた時は、普通に一緒のベッドで寝てただろ」

 あの頃の温水寧凪は、今みたいに露骨に嫌がったりしなかった。

 温水寧凪は鼻で笑う。

「自分で言ったじゃない、本家にいた時って。おばあさまの目の前で仲悪そ...

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