第53章

声はかすかだったけれど、言葉に迷いはなかった。

堀内逸弥は、それ以上何も言わなかった。代わりに「よく休め」とだけ残して部屋を出ていく。

ぐっすり眠ってから、何か食べようと外に出ると、入口のところで後藤辰和と鉢合わせた。

後藤辰和は、早乙女星奈と電話中らしかった。どこか苛立っているくせに、それでも我慢強く相手をしている。

「子どもの様子は分かった。こっちでもう一度専門医に診せてみる。用がないなら、今日はこのへんで切るぞ」

そう言いながら、横目でちらりとこちらを見た。

私はそのまま歩き出す。

「なんで待っててくれないんだよ」

すぐ後ろから追いかけてきて、恨みがましく言う。

「な...

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