第54章

早乙女星奈の瞳の奥には、隠しきれない不服の色が渦巻いていた。けれど、後藤辰和のあの陰鬱な視線とぶつかると、彼女は悔しげに歯を食いしばり、私に向かって謝罪の言葉を絞り出した。

「ごめんなさい、寧凪。さっきは頭がどうかしてたの。酷いこと言って……許して」

私は冷ややかな声で突き放す。

「死んだ子供の分まで許すなんて、私にはできない」

「じゃあ、私の命で償えって言うの!?」

早乙女星奈が金切り声を上げて爆発した。

「私が死ねば、許してくれるわけ?」

そう言い捨てると、彼女は縋るような、湿っぽい視線を後藤辰和に向けた。

だが、後藤辰和の視線は私に釘付けで、彼女のほうなど見向きもしない...

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