第58章

それほど待つこともなく、廊下の奥から足音が近づいてきた。私は即座に意識を失ったふりをして、床に崩れ落ちる。

衣擦れの音がして、扉が開かれた。

「へっへっ、姉貴も人が悪いよなぁ。金はくれるわ女はあてがってくれるわで、至れり尽くせりじゃねえか」

男は下卑た手つきで両手を揉み合わせながら、そう独りごちた。

明かりがつけられ、男が私のそばまで歩み寄ってくる。彼はしゃがみ込むと、品定めするようにジロジロと私の顔を覗き込んだ。

「へえ、上玉じゃん。惜しいな、足が悪いのかよ」

私の手にある杖が目に入ったらしい。あからさまに嫌そうな顔をしたが、すぐにまたブツブツと念仏のように唱え始めた。

「ま...

ログインして続きを読む