第65章

後藤辰和はしばらく沈黙を守り、それ以上反論することはなかった。やがて、静かな声で言った。

「彼が言ったことは気にするな。今まで気づかなかったが……君にはこの分野の才能があるようだ」

「見る目がなかっただけでしょ」

捨て台詞を吐いて、私は後藤辰和の顔色も伺わずに背を向け、オフィスを出て行った。

帝大を出て、後藤辰和の車に乗り込んでも、車内は終始無言だった。

マンションの下に到着し、シートベルトを外してドアを開けようとしたその時、後藤辰和が突然私を呼び止めた。

「温水寧凪」

振り返ると、彼の瞳の奥には罪悪感が滲んでおり、いつもより声色が柔らかかった。

「坂東教授の件は、俺の配...

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