第66章

「秘書に調べさせる」

後藤辰和は私を見てそう言った。

心当たりはあった。あの学生は間違いなく坂東教授に唆されたのだ。そうでなければ、面識もない私にいちゃもんをつけてくるはずがない。

昨日、勝負に負けた坂東教授は顔を真っ赤にして部屋を出て行った。その腹いせに、あることないこと吹き込んで学生をけしかけ、報復させたに違いない。

私たちは帝大のキャンパスの中へと歩を進めた。すれ違う多くの学生が、奇異な視線を向けてくる。

それが隣を歩く後藤辰和に向けられたものか、濡れ鼠の私に向けられたものかは分からない。

後藤辰和がジャケットを脱ぎ、私の肩にかけた。反射的にのけようとすると、彼は私の肩を押...

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