第86章

後藤寧々は目をパチパチと瞬かせ、笑いながら言った。

「あら、恥ずかしがることなんてないわよ。人の常なんだから。分かってる、分かってるって」

「違うんです、私は……」

言いかけたのに、後藤辰和はさっさと歩き出してしまった。

「なんで弁解してくれないの?」

私は彼の背中に向かって文句を言った。

何もしていないのに、あんな姿を見られたら、中でよからぬことをしていたと思われるに決まっている。あまりにも気まずすぎる。

これからどうやって後藤寧々に顔を合わせればいいの?

「夫婦なんだ。誤解されたところで何の問題がある」

彼は歩きながら平然と言い放った。

私を抱きかかえたまま、しっかり...

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