第94章

「いい加減にして」

 私は眼球の奥が熱くなるのを堪え、大きく息を吸い込んだ。

「どうせ私たちは離婚するんだもの。あなたが誰を信じようと、誰を庇おうと、もう私には関係ないわ」

「離婚はしない」

 彼は低い声で言い放った。

「なら、法廷で会いましょう」

 私は冷ややかに告げる。

「後藤辰和、この離婚だけは絶対に譲らない」

 そう言い捨てると、私は彼の手を振り払い、一度も振り返ることなくその場を去った。

 今回ばかりは、彼も私を引き止めようとはしなかった。

 宴会場に戻ると、堀江さんが誰かと話し込んでいるのが見えた。私に気づくと、彼は穏やかに手招きをした。

 私はそのそばへと...

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