第95章

車内の空気は、刻一刻と凍てついていく。

窓外を流れる街灯が、後藤辰和の横顔に明暗の縞模様を描く。影の中で、彼が唇を真一文字に結び、顎を強張らせているのが見えた。

「言ったはずだ」

一語一語、鉄のように冷たく重い響きだった。

「離婚なんて、あり得ない」

私は彼の視線を真っ向から受け止め、一歩も引かなかった。

「私も言ったわ。絶対に別れるって」

「温水寧凪!」

彼は低く唸ると、乱暴に私の手首を掴んだ。

痛みで眉を顰めたが、弱みは見せたくない。

「何? 後藤さん、暴力でも振るうつもり?」

「どうしてそこまで頑ななんだ」

低音の底に、読み取れない感情が押し殺されている。

「...

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