第128章 とっくに辞めるべきだった

中村健は役員たちを引き連れ、先頭を切って歩いていた。

ふと視線を上げると、鈴木七海と佐藤奈須が寄り添うように立っているのが目に入った。二人は見つめ合い、その瞳には深い情愛が湛えられている。

佐藤奈須が何かを囁いたのか、鈴木七海が花が咲いたような笑顔を見せた。

刹那、中村健の胸に鉛のような重苦しさが広がる。

結婚して五年。鈴木七海が俺に、あんな顔を見せたことがあっただろうか。

いや、ない。一度もない。あるいは俺のせいで、彼女はあんなふうに笑うことができなかったのかもしれない。

当然、後ろに続く役員たちの目にも彼女の姿は映っている。

いずれにせよ、ここにいる人間の多くは鈴木七海を支...

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