第145章 裏切り者は誰か

彼は迷い、葛藤し、彼女の言葉を吟味している。

結局のところ、佐藤奈須という男は利益を最優先する人間だ。

もし今、彼が手を引くと言うなら、鈴木七海に返す言葉はない。

将来、彼に責められ、不満をぶつけられ、恨まれるようなことにはなりたくない。だからこそ、ここで終わらせるのが最善の結末なのだ。

私一人でも前に進める。一人でも十分に生きていける。

不意に、頭を優しく撫でられる感触があった。次の瞬間、逞しい腕が七海を包み込む。

彼は小さく溜息をつくと、耳元で低く囁いた。

「七海、目を開けて。俺を見ろ」

七海の長い睫毛が震え、やがてゆっくりと瞳が開かれた。

視線が佐藤奈須の漆黒の瞳と絡...

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