第166章 もう戻れない

林原宏は彼女をじっと見つめ、諭すような穏やかな口調で言った。

「七海ちゃん、佐藤奈須の居場所を知りたいんだろう? 中村信ならここにいる。聞きたいことがあるなら、いつでも彼に聞けばいい。だが、彼が生きていなければ答えは聞けないよ」

実のところ、林原宏も緊張していた。鈴木七海がこのまま錯乱し続け、自分の言葉さえ届かなくなることを恐れていたのだ。

鈴木七海はハッとしたように動きを止め、眉をひそめた。思考を巡らせているのだろう。

やがて、彼女は車を降りた。

だが車外に出た瞬間、足の力が抜け、地面に崩れ落ちそうになる。

林原宏は咄嗟に動き、よろめく彼女の体を支えた。

伝わってくる熱気。

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