第20章 鈴木七海はそんな人じゃない

ドアを開けると、鈴木七海は白いワンピースを纏った鈴木南が、不機嫌そうな顔で秘書室の入口に立っているのを目にした。

今のところ中村健の首席秘書は鈴木南であり、彼女が仕事をどう采配しようとそれは彼女の権利だ。だから鈴木七海はちらりと一瞥しただけで、何も言わずに身を翻してその場を去った。

先ほどクライアントから電話があり、中村グループの製品に問題が発生したとのことだった。彼女は技術部の者と現場に赴かなければならない。

鈴木南は不機嫌な顔で腕を組み、威圧的なオーラを放っていた。

「中村社長のコーヒーは準備していないの? 毎朝、社長はブラックコーヒーを一杯お飲みになるのよ。まさか知らないわけじ...

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