第210章 愚かな決断

中村健の胸に、酸いものが込み上げてきた。

彼の視線は一枚の写真に注がれている。写真の中の二人は並んで立っているのに、俺の視線はずっと遠くを彷徨い、そこには一片の温もりもなかった。彼女に眼差しの端さえ向けていなかったのだ。

対照的に、鈴木七海は目を細めて微笑み、俺を見つめている。

誰が見ても分かるだろう。彼女の黒い瞳には、俺しか映っていないと。

彼女は日記に『結婚おめでとう』と記すのが精一杯だった。あの結婚は、彼女にとって喜びだったのか、それともただの恐怖だったのか。

俺に疑われ、誤解されるのを恐れて、愛を示すことさえできなかったのだ。

中村健の心臓が、雑巾のように絞り上げられる。...

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