第278章 重く沈む過去

中村陸は中村信を見つめた。その口調は穏やかでありながらも、深い響きを帯びていた。

「彼女と中村健の兄妹の絆が絶たれることも、あなたが実刑判决を受けることも……そのどちらの結末も、楓は望んでいません」

「楓の願いはとてもシンプルです。今のまま、何も変わらないこと。ただそれだけで十分なんです」

彼は心から中村楓のことを想い、一言一言をはっきりと口にした。だが皮肉なことに、中村信にはその言葉を受け入れることができなかった。

中村信とて、当然ながら中村楓を大切に思っている。幼い頃から目に入れても痛くないほど可愛がってきた子供なのだ。

しかし、このまま負けを認めるわけにはいかなかった。長年耐...

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