第279章 身代わり

鈴木南は心底冷え切ったものを感じ、低く頷くことしかできなかった。中村信に逆らうことなど、到底不可能だった。

「よし、もう下がっていいぞ」

彼は軽く手を振った。

鈴木南はそこでようやく安堵の息を漏らし、逃げるように部屋を後にした。

彼女の後ろ姿が部屋から消えるのを見届けると、中村信の瞳は暗い光を宿し、パソコンの画面に表示された資料へと向けられた。

画面の一番上には、拡大された一枚の写真がある。そこに写る女性は美しく愛らしく、笑うと両頬にえくぼが浮かび、まるで幸福に包まれた小さなお姫様のようだった。

林原夏美。林原宏の実の妹。

海外の著名なデザイナーの弟子であり、すでに国際的なデザ...

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