第280章 ただのおもちゃ

あの日、上村愛美はすでに去る覚悟を決めていた。

白崎政光と結婚する気など毛頭なかった。彼が彼女に慣れきっていたこと、そして森下美香に婚約者がいることを知っていたからこそ、彼が手放そうとしなかっただけだ。

あの頃、彼女は白崎政光に対して何の感情も抱いていなかったのに、彼は無理やり傍に置こうとした。

今、彼女が白崎政光に心を開き始めたというのに、自分はただの身代わりに過ぎないと誰かが告げる。

なんという悲喜劇だろうか!

妻でもなく、愛する人でもなく、ただの慰み者。

別荘のゲートのインターホンが鳴り続けていたが、彼女はすでに泥酔していた。

白崎政光!

もし彼が帰ってきたら、しっかり...

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