第316章 白崎政光から離れる

唐突に鳴り響いた着信音が、上村愛美の心に垂れ込めていた重苦しい静寂を打ち破った。

ふと我に返り、過去の追憶から現実へと引き戻される。視線を落としたスマートフォンの画面には、一つの名前が表示されていた――鈴木七海。

愛美は小さく息を吐いて感情を押し殺し、極めて平静な声を装った。

「七海ちゃん」

「愛美ちゃん、聞いたよ。白崎政光と揉めたって。白崎グループエンターテインメントを辞めるって、一体どういうことなの?」

スピーカー越しに伝わってくる鈴木七海の切実な心配と気遣いの声に、愛美の胸は微かに温かくなった。

しかし今の彼女にとって、その温もりはかえって苦さを増幅させるだけだった。

愛...

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