第321章 彼女を国外へ送る

白崎政光はしばらく沈黙した後、淡々と言い放った。

「精神病院から逃げ出したのなら、また連れ戻せばいい」

森下美香の命を奪わずにいること、それが彼なりの最大の慈悲だった。

その瞬間、森下美香の心にあった希望は木端微塵に打ち砕かれた。

白崎政光なら少なくとも見逃してくれるだろうと思っていたのに、まさかここまで冷酷だとは。上村愛美という生きた血液バンクのために、自分を死地に追いやろうとするなんて。

森下美香の瞳孔がじわじわと見開かれ、両目は充血したかのように赤く染まり、整った顔立ちが一瞬にして醜く歪んだ。

「白崎政光、どうして私にこんなひどいことができるの?!私たち、昔から愛し合ってい...

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