第374章 上村愛美が水に落ちる

「塩浦さん、誤解です。わたしはただ……」

上村愛美が説明しようとした、そのとき。

少し離れた場所から、監督の声が飛んだ。

「愛美ちゃん、次お前の番だ! 早く準備して!」

……助かった。監督が声をかけてくれなければ、このまま塩浦正美の相手をし続けて、息が詰まって死にそうだった。

上村愛美はすっと立ち上がり、礼儀だけは崩さず、塩浦正美に柔らかく笑ってみせる。

「じゃあ塩浦さん、撮影に行ってきます。待つのが退屈なら先に帰ってもいいです。わたしに断らなくて大丈夫です」

台本をスタッフに渡し、現場へ向かおうとした瞬間――手首をぐいっと掴まれた。

心臓が跳ねる。

反射的に振りほどこうと...

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