第375章 塩浦正美を選ぶことを望む

 かつて彼女がいちばん欲しかったのは自由だった。けれど白崎政光は、一度だってそれを与えてくれなかった。

 ――なのに今は、別の誰かがくれると言っても、自由なんてそれほど大事に思えない。

 心さえ自由なら、どこにいたって自由。そうでしょう?

 上村愛美は俯いて、苦く笑った。もう一度口を開こうとした、そのとき。

 病室の扉口に、ふっと人影が立った。

「愛美ちゃん……大丈夫か?」

 その顔を認めた瞬間、上村愛美の血が逆流したみたいに体中を駆け上がり、内側がぐらりと煮え返った。

 ぎゅっと掌を握りしめ、表情がすっと冷える。

「……誰が来いって言ったの?」

 塩浦正美も視線を向ける。...

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