第395章 時勢をわきまえる

研究所のごく普通の職員だった。黒田星奈の喉が潰れんばかりの追及を浴びても、彼は俯いたまま、一言も返さない。

男の視界の端に、村上香奈が緊張して後ずさる足先が映った瞬間、胸の奥で守りたいという衝動が跳ね上がった。次の瞬間には、どさりと膝をついていた。

「……俺が、そのとき取り違えたんです。先生の身体データを……」

「怖くて……真っ先に逃げました。でも、やり直そうって戻ってきたら、もう村上さんが救命されてて……」

「ずっと人混みに紛れてました。すみません……本当に、わざとじゃないんです」

小さな職員は最後に一度だけ村上香奈を見て、胸の奥に、馬鹿みたいに大きな勇気を灯した。

仕事なんて...

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