第432章 犬が犬を噛んで喧嘩になった

塩浦正美の読みどおり、上村愛美はカメラの向こうで、確かにすべてを見ていた。

ネットのどよめき。

そして、やけに誠実そうな顔をして、いつもの冷酷さをかなぐり捨てた塩浦さん――いや、どこか青臭いほど緊張した塩浦正美。

彼女はまるで、火にあぶられているみたいだった。

どう返せばいいのか、言葉が出てこない。

塩浦正美は、これをやる前に誰にも言わなかった。

つまり、鈴木七海ですら、配信が大炎上してからようやく知ったのだ。あいつが無言で、こんな大ごとをやらかしたことを。

七海は怒り心頭で仕事を放り出し、真っ先に病院へ駆けつけた。そこにいたのは、苦しげに揺れる上村愛美。

――もう遅い。

...

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