第438章 寒川行雄が自ら放棄する

黒田蓮がふいに薬液の入った容器をひっくり返した。しゃばしゃばと床に広がり、足元が濡れる。

「もう、どうしてそんなに不注意なの?」

「ほら、立って。服、汚れてない?」

鈴木七海は慌てて黒田蓮の腕をつかんで起こし、眉根をきゅっと寄せたまま、濡れたところを拭こうとする。

七海の中では、まだ彼は手のかかる子ども扱いだ。襟元をつまんでぐい、と引き寄せ、世話を焼く。その仕草のせいで——黒田蓮の耳の先が、じわじわと赤く染まっていくことにも気づかずに。

黒田蓮は反射的に七海の手を避け、むすっとした声でタオルを受け取った。

「……おれがやる」

それきり、口を閉ざした。

鈴木七海は不思議に思いな...

ログインして続きを読む