第17章 昔のクラスメート

桜井美也と高橋陽子はA館の一角に立ち、上杉深が他の出展者と話しているのを見ていた。突然、高橋陽子が桜井美也の腕を軽くつつき、小声で言った。「ねえ、知ってる?さっき聞いたんだけど、この上杉深ってただ者じゃないんだって」

桜井美也は友人を疑わしげに見つめた。「どういうこと?」

高橋陽子は興奮気味に説明した。「彼、金融の天才なんだよ!帰国したばかりで、もう上場企業の社長になってるんだって。海外でもすごく有名だったらしいよ」

桜井美也は驚いて上杉深を見つめた。目の前のこの穏やかで礼儀正しい男性が、そんなビジネスの巨人だなんて信じられなかった。

彼女は先ほどの会話を思い返し、最初は上杉深がいつ...

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