第106章

心臓が早鐘を打つ。喉が張りつくように渇く。

 まるで果てしない砂漠を彷徨う旅人のように、一歩一歩が鉛のように重い。

 おばあちゃんじゃない。

 おばあちゃんであるはずがない。

 人混みをかき分け、ようやく最前列にたどり着いた水無瀬柚季の髪は乱れ、額に張り付いた前髪の隙間から、地面に横たわる人影を捉えた。

 その瞬間、目の前が真っ暗になった。

 倒れている老人は、落ち着いた色合いの柄シャツを着ている。それは、水無瀬柚季が祖母のために買ったものだった。

 年配の人は、派手な色よりもこういった素朴な色合いを好む。「生地が柔らかくて着心地がいい」と、祖母はいつも嬉しそうに言っていた。

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