第112章

「証拠は?」

 水無瀬柚季は、ただ一言そう訊ねた。

 かつて鷺沢家で、鴉城咲夜が彼女を問い詰めたときのように。ただ、攻守が逆転しただけのことだ。

「私が証人よ! あんたが突き飛ばしたって言えば、犯人はあんたになるの!」

 鴉城咲夜がそう喚くと、水無瀬柚季は鼻で笑った。

「何を根拠にそんなことが言えるんですか? あなたは裁判官? それとも警察? 警察だって捜査には証拠を重視しますよ。人的証拠に物的証拠……もちろん、犯人は私だと言い張ることはできます。誰のせいにするのも自由です。でも、それには物的証拠が必要なんですよ。たとえば監視カメラの映像とか、第三者の証言とかね」

 水無瀬柚季は...

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