第129章

 雨宮澪はどこをとっても非の打ち所がない女性だが、唯一、その口の悪さだけが玉に瑕だ。

 彼女は相手を想っていればいるほど、喧嘩になった時の言葉が鋭くなる。水無瀬柚季はかつて、雨宮澪が父親と口論している場面を見たことがあるが、その一言一句がまるで刃物のように、相手の心臓を的確に抉っていた。

 あれは、親子だからこそ翌日に持ち越さずに済んだのだ。

 だが、親愛の情であれ愛情であれ、それらはすべからく消耗品である。他人の言葉の暴力に、永遠に耐え続けられる人間などいない。

 雨宮澪はバツが悪そうに頭をかいた。

「わかってるわよ。時々、この口が勝手に動いちゃうの。でも安心して、あんたの言うこ...

ログインして続きを読む