第134章

「彼女は、雪山に入ったのか?」鷺沢雪紘が問い詰めた。

 旅店の店主は、首を横に振ったかと思えば、今度は縦に頷いた。その不可解な挙動に、雨宮澪は呆気にとられた。

「結局、入ったの? 入ってないの? はっきりしてよ。頷いたり首を振ったり、どういう意味なの」

 店主は包丁を置き、前掛けで手を拭った。

「首を振ったのは、あの探検隊と一緒に今朝出発しなかったからだ。連中はチェックアウトして、そのまま帰っちまったからな」

「頷いたのは、あの娘がまだここを去っていないからだ」

「じゃあ、彼女はどこにいるのよ」

「山に入ったよ」

 雨宮澪は目の前が真っ暗になりかけた。

「一度に全部言えない...

ログインして続きを読む