第170章

ホテルのビルは首が痛くなるほど高く、見上げなければ頂上が見えない。

 雪がまつ毛に落ち、瞬く間に静かに溶けていく。

 水無瀬柚季はマフラーをぐっと引き上げ、顔の半分をその下に隠した。

「パパ、早く来てよ!」

 その声が、瞬時に水無瀬柚季の視線を奪った。

 小さなその姿は、ピンク色のダウンジャケットに身を包み、ウサギの耳がついた白い帽子をかぶっている。寒さで頬を真っ赤に染めながら、短い足で一生懸命に雪を踏みしめていた。

「雪だ、雪が降ってる!」

 水無瀬柚季は、貪るようにその姿を見つめた。

「走るな、転ぶぞ」

 少女の後ろには、黒いコートを纏った男がいた。

 この寒空の下、...

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