第185章

病室の前の廊下は、静寂に包まれていた。

 ただ車椅子のタイヤが床を転がる微かな音だけが響く。叢雲柚斗は車椅子を押し、病室のドアの前で足を止めた。

 中には入らなかった。

 病室の中から、光の小鳥のような愛らしい声が聞こえてくる。

「パパ、どうして車になんかぶつかっちゃったの? 今は痛くない?」

 鷺沢雪紘が答える。

「痛くないよ」

 水無瀬柚季はドアの隙間から、ベッドに横たわる人影を盗み見た。

 彼の額にはガーゼが当てられている。雨宮澪と椎葉櫂がベッドの両脇に立ち、光がベッドの端に張り付いて、その小さな手で彼の手のひらをしっかりと握りしめていた。

 あの子は、彼に懐いている...

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