第203章

 椎葉櫂はクローゼットを開け放った。

 中には所狭しと服が吊るされている。ワインレッド、黒、グレー……様々な色が並んでいるが、白だけが見当たらない。

「笑える話だろ。あれだけの修羅場をくぐり抜け、誰よりも強くなったはずの男が、たかが色一つに縛られて、自分をここまで追い詰めているんだ」

 彼の中には、水無瀬柚季に対するわだかまりが少なからずあった。

 生きているなら、なぜ戻ってこなかったのか。

 戻ってきたのに、なぜ自分の正体を明かさないのか。

 だが、鷺沢雪紘が何も言わない以上、彼が口を挟むことではない。

 ただ、彼は水無瀬柚季に知ってほしかったのだ。鷺沢雪紘の彼女への愛が、片...

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