第209章

「入ってもいい?」

 遠野望は水無瀬柚季を居丈高に見下ろしながらそう口にしたが、返事を待つまでもなく、土足で踏み込むように部屋へ入ってきた。

 水無瀬柚季はドアを半開きにしたまま、冷ややかに尋ねる。

「何か御用ですか?」

 遠野望は我が物顔でソファに腰を下ろした。そのあまりに自然な振る舞いは、まるでここが彼女自身の部屋であるかのようだ。

 むしろ水無瀬柚季のほうが、部外者であるかのように錯覚させる。

「あなた、本当に叢雲柚斗の恋人なの?」

 水無瀬柚季は本能的に否定しそうになったが、叢雲柚斗との計画を思い出し、結局は沈黙を選んだ。

 遠野望にとって、沈黙は肯定と同義だった。

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