第213章

リビングは静寂に包まれていた。二人とも言葉を発さず、ただ微かな呼吸音だけが空気に溶けていく。

 鷺沢雪紘は薬のチューブを手に取り、彼女の患部に塗り込んでいた。

 その手つきは慎重で優しい。水無瀬柚季はずっと視線を伏せ、彼を見ようとしなかった。

 まさか、鷺沢雪紘の口からあんな言葉が出るとは思わなかったのだ。

 あまりに唐突で……どう顔を合わせればいいのかわからない。

 一夕にして仮面を剥ぎ取られ、正体を暴かれてしまったような気分だ。

 薬を塗り終えると、鷺沢雪紘は彼女をじっと観察した。

「アレルギー反応はそれほど酷くないが、戻ってからも経過観察が必要だ」

 患部は冷んやりとし...

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