第215章

夜。

 突如として、激しい雨が降り出した。

 雷鳴に驚いて目を覚ました水無瀬柚季は、窓が少し開いていることに気づいた。隙間から雨粒が吹き込み、床を濡らしている。彼女はベッドから起き上がり、窓を閉めようと近づいた。

 ふと、眼下の通りに一台の車が停まっているのが目に入った。

 車体の横で、猩紅色の点が明滅している。煙草の火だ。

 だが、外はバケツをひっくり返したような豪雨である。火が点き続けるはずもない。

 案の定、次の瞬間にはふっと赤い光が消えた。

 その時、稲妻が天空を引き裂き、一瞬だけ世界を白昼のように照らし出した。

 刹那の光景。

 けれど柚季は、はっきりと見てしまっ...

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