第231章

水無瀬柚季は困惑していた。承諾したとはいえ、彼女はずっとそのことから意識を逸らそうとしていた。考えなければ、まるで何も起こらないかのように。

 だが現実は非情だ。考えないことは、逃避を意味しない。

 彼女の沈黙から緊張と萎縮を感じ取ったのか、彼は理性を総動員して動きを止め、それ以上詰め寄ることはしなかった。

「柚季、安心してくれ。君が嫌なら無理強いはしない」

「ただ……愛おしくてたまらないんだ。軽く口づけるだけ、いいだろう?」

 今、最もすべきことは後退り、彼女を怖がらせないことだと分かっている。

 それでも、彼はどうしようもないほど彼女を求めていた。思慕の情がこれほどまでに骨身...

ログインして続きを読む