第235章

「なんでもないわ」

 水無瀬柚季は咄嗟に、その服を箱の中に押し込んだ。鷺沢雪紘の視界には、鮮烈な赤色がちらりと映っただけだった。

 だが、それが何なのかまでは見えなかった。

「もう遅い。明日は誕生パーティーがあるんだ、早く戻って休め」

「ええ、もう戻るわ」

 水無瀬柚季は箱を抱え、逃げるように去っていった。

 その背中を、鷺沢雪紘が思案げな眼差しで見送っていることなど知る由もなく。

 彼が部屋に戻ったのは、すでに夜の十時を回っていた。

 部屋は真っ暗だ。聞くまでもない、水無瀬柚季はまた光ちゃんの部屋へ行ったに違いない。

 彼はふっと息を吐いた。

 その時、手探りした指先が...

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